イミタチオ・クリスティ

村の小さな教会

3月24日(火):若殿しゃん

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伊達 順之助 旧仙台藩伊達家の御曹司である。(1892~1948年)戦国武将伊達政宗の直系子孫。父親は仙台藩知事である。しかし、一代の風雲児であった。・・・壇一雄がこの男をモデルに「夕日と拳銃」という小説を書いた。拳銃の名手で、満州に渡り、馬賊となった。昭和の時代というより大東亜の時代を生きた風雲児、風のように生き抜いた男。・・・

壇の小説が映画化されたという。若い頃それを観たのだろう。映画では伊達麟之介という名であった。今でもたった一つだけ覚えている場面がある。他は全部忘れている。・・・前田吟という役者さんがいる。今でも活躍している、なにやらほっこりとする優しい脇役さんである。彼が主役麟之介を演じていた。「若殿しゃん」のお付きの「爺」が小松方正である。今考えても、なるほどという配役である。・・・麟之介は街のならず者を相手に争い事を起こし、得意の拳銃を抜いて撃ちかけた。

騒ぎを聞いて駆けつけた小松方正演じる「爺」が言った。

「若殿しゃん・・・なんという事をすっとですか」

「仕方なかじゃろう、もしかすればわしが殺されるとこじゃった。わしは、大望のある身じゃこんなところでは死ねん」

「若殿しゃん・・・死になはれ、街のならず者に撃ち殺されるようなら、天が若殿しゃんを必要としていないということです。それならば、潔く死になはれ、街のならず者相手に命のやりとりをするような男に、どうして天が味方しましょうか」

・・・大体こんな場面だったように思う。・・・伊達順之介の生涯は、キリスト教とは無縁ものであったろう。大陸浪人と言われるある種の人々であったが、順之助は日本の国籍を離れ、馬賊頭目にまでなっている。それほど満州を愛した人なのだろうと思う。「夕日と拳銃」を書いた壇一雄自身もまた大陸浪人であったという。私の記憶違いでなければ、女優の壇ふみはお嬢さんのはずである(関係ないか?私が壇ふみのフアンなだけである)・・・「満州国は日本がモンゴルにつくりあげた傀儡政権である。ソビエトが参戦し、満州国が崩壊した。政庁に満州国の「高官」が来て、命じた。「全てを焼き捨てて逃げよ!」・・・彼は腰のベルトに拳銃一丁たばさんで何もかも打ち捨てて、風をくらって消えた。傍目で見ていた日本の軍人たちは目を白黒させた。ある軍人がその光景を戦後述懐している。「ああ、我々は、馬賊の国にいるのだ!」と。驚いたという。・・・「蒼き狼」の国ジンギス・ハーンの版図は世界を覆ったが、その命脈は短かった。次の時代彼らは何処にいたのか。自分たちのゲルに帰り、馬に乗って草原にいた。大帝国もなんのその風をくらって故郷へ帰っていたのである。・・・

面白い故事が聖書に載っている。「振り返るな」とわざわざ注意されていたのに、振り返って塩の柱になったロトの妻のことである。このことは、、人は時には未練がましく振り返ってはならないということなのだろうと諭される。主イエスも言われた、自分の命を得ようとする者はそれを失うと。

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