アンブローズ・ビアズ(米人 1842~1913年)
孤絶の風刺家として、彼の生涯を書いた西川正身氏によれば、「短編小説を組み立てさせれば、彼ほど鋭い技巧家は少ないと。芥川龍之介が評したビアスはその特異な作品の面白さもさることながら、一個の人間として限りない魅力を持つ。ジャーナリズム界に君臨し、数多くの門弟に取り囲まれ、しかも心を開いて語り合う友人といってほとんどなく、最後に革命さなかのメキシコへ旅立ったまま消息を絶った。その孤独な姿を私は
描きだしてみたかった」。と書いてある。・・・・・・・・
その、アンブローズ・ビアスが書いたのが、悪魔の辞典である。この「辞典」はローマ・カトリック教会から「禁書」の指定を受けている。敬虔な信者さんは、この本を読んではいけませんよ。というおふれなのである。しかし、読むなと言われれば余計読みたくなるのが、人の常、A~Zまで全部読むのは厄介なので、短い言葉を選んで、紹介しよう。
「歴史家」・・・広範囲にむだ口をたたく輩
「労働」・・・AがBのために財産を獲得してやる方法の一つ
「無精」・・・身分の低い者にある不当に落ち着いた態度
「博識」・・・学問に励む者に特有の無知
「遺産」・・・この涙の谷から逃げ出してゆく者からの贈り物
「長生き」・・・死の恐怖を異常に伸ばすこと
「忍耐」・・・復讐の計画をねりあげる一方で、
侮辱におとなしく耐える傾向
「悪人」・・・人類の進歩にもっとも重要な要素
「口」・・・男では魂に至る道だが、女では心のはけ口
「小説」・・・引き伸ばされた短編小説
「孤児」・・・両親が死んだために、親不幸をする力を奪わ
れたままこの世に生きている人間
「忍耐」・・・美徳を装った絶望のちっちゃなもの
「平和」・・・国際関係で、戦争と戦争の間の
だましあいの期間
「気晴らし」・・・失意を増進させる工夫。知的無能者の
やさしい運動
「助ける」・・・忘恩の徒を育てる
「運命」・・・暴君が悪いことをするさいによりどころに
するもの。間抜けがへまをやらかした時の口実
「奇行」・・・とても安あがりな有名になる方法
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まぁ、ざっとこんな調子だが、少しばかり笑えるが、気分は晴れない。やはり、教皇様の言われるように「敬虔なキリスト者」は避けた方が無難な辞典である。せめて、添付の画像だけは楽しいものにしよう。