イミタチオ・クリスティ

村の小さな教会

6月24日(水):酒・旅・歌 若山牧水

若山牧水:1885(明治18年)~1928(昭和3年)

享年43歳。宮崎県日向市に生まれ、神奈川県沼津市に没す。

学校の教科書にも載っていたくらいだから、牧水とその短歌を

知っている人も多いとおもう。酒を愛し、旅を愛し、歌を愛したこの、最も純朴な真の歌人らしい歌人として、生涯職業をもたず、歌人として貧しい、短い生涯を終えた。・・・・・・

牧水は、自分の歌を「いのちの寂しさに耐え兼ねて叫ぶ声。よろこびに挙ぐる声。それが即ち我らの歌でありたい」と書いている。彼は生涯9千首の歌を遺したが、私は、小さな歌集一冊しか持っていないが、これで十分だ。

f:id:dotadotayocchan:20200527131918j:plain

     ☆         ☆         ☆

☆・・・幾山河 越えり行かば 寂しさの

           果てなん国ぞ 今日も旅行く

☆・・・白鳥は 悲しからずや 空の青

           海の青にも 染まずただよふ

☆・・・けふもまた こころの鉦を 打ち鳴らし

           打ち鳴らしつつ あくがれて行く

f:id:dotadotayocchan:20200613133907j:plain

 

☆・・・君かりに わたつみに 思われて

           言いよられなば いかにしたまふ

註:わたつみ 海を支配する神

f:id:dotadotayocchan:20200605165908j:plain

☆・・・白玉の 歯にしみとおる 秋の夜は

           酒は静かに 飲むべかりけり

誰でも知っていそうな歌を五首ばかり紹介してみた。

 

八木 重吉の詩にこういうのがある。

「素朴な琴」

このあかるさのなかへ

ひとつの素朴な琴をおけば

秋の美しさに耐えかねて

琴はしずかに鳴りだすだろう

牧水の歌も、秋のしずかさに、さそわれて、うたい出したような、おももちにさせられる。

 

また、幾山越えさり行かば・・・・という一首は。

カール・ブッセの詩想と酷似している。

f:id:dotadotayocchan:20200530121527j:plain

山のあなたの空遠く

幸い住むとひとのいう

ああ、われひとと尋めゆきて

涙さしぐみ帰り來ぬ

山のあなたのなお遠く

幸い住むとひとのいう」

牧水が、亡くなったとき、まだ9月の残暑の厳しい時期だったにもかかわらず、しばらく腐臭がなかったという。医師は体がアルコールづけみたいなことだったのだろうと。語ったという

この歌人は生涯「仕事」に就かなかった。牧水は地方へ旅を続け、北海道から、沖縄まで渡った。芭蕉もそうだったが、その土地その土地の少し裕福な人たちから、なにがしかのものを受けながら、歌をつくり続けていたようだ。

f:id:dotadotayocchan:20200620214037j:plain

f:id:dotadotayocchan:20200424105748j:plain