イミタチオ・クリスティ

村の小さな教会

8月27日(木):道程 高村光太郎

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道程

僕の前に道はない

僕の後ろに道は出来る

ああ、自然よ

父よ

僕を一人立ちさせた広大な父よ

僕から目を離さないで守る事をせよ

この遠い道程のため

この遠い道程のため

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失われたるモナ・リザ(抄訳・後半)

モナ・リザは歩み去れり

かつてその不可思議に心をののき

逃亡を企てし我なれど

ああ、あやしきかな

歩み去るその後かげの慕はしさよ

幻の如く、またアヘンの焼く畑の如く

消えなば、いかに悲しからむ

ああ、記念すべき霜月の末の日よ

モナ・リザは歩み去れり 

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樹下の二人

・みちのくの安達が原の二本松 松の根かたに人たてる見ゆ・

あれが阿多多羅山(あだたらやま)

あの光るのが阿武隈川(あぶくまやま) 

かうやって言葉すくなに坐っていると、

うっとりとねむるような頭の中に、

ただ遠い世の松風ばかりが薄みどりに吹き渡ります。

この大きな冬のはじめの野山の中に、

あなたと二人静かに燃えて手を組んでいるよろこびを

下をみているあの白い雲にかくすのは止しましょう。

 

ここはあなたが生まれたふるさと、

あの小さな白壁の点点があなたのうちの酒蔵。

それでは足ををのびのびと投げ出して、

このがらんと晴れ渡った北国の

木の香りに満ちた空気を吸おう。

あなたそのもののやうなこのひやりと快い、

すんなりと弾力のある雰囲気に肌を洗はう。

私は又あした遠く去る、

あの無頼の都、混沌たる愛憎の渦の中へ。

ここはあなたの生まれたふるさと、

この不思議な別個の肉親を生んだ天地。

まだ松風が吹いています、

もう一度この冬のはじめの物寂しい

パノラマの地理を教えて下さい。

 

あれが阿多多羅山

あの光るのが阿武隈川

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十和田湖畔の裸像に与ふ

銅とスズの合金が立っている。

どんな造型が行われようと

無機質の図形にはちがひがない。

はらわたや粘液や脂や汗や生きものの

きたならしさはここにない。

すさまじい十和田湖畔の円錐空間にはまりこんで

天然四元の平手打をまともにうける

銅とスズの合金で出来た

女の裸像が二人

影と形のやうに立っている。

いさぎよい非情の金属が青くさびて

地上に割れてくづれるまで

この原始林の圧力に堪えて

立つなら幾千年でも黙って立っていろ。

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妻智恵子が没してから二十年近く、昭和三十一年に光太郎が亡くなるまで、主に岩手の地で生き続けた。詩集をみていくと、どれほど深く智恵子を想っていたか察せられる・・・・

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そう言えば、うちのちえ子が、うちの前の朝顔が今年も咲いたと

言って来た。青い二輪の花が咲いていた。

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花見えるかな? もう少ししたらもっと咲くよ・・・・