イミタチオ・クリスティ

村の小さな教会

9月4日(金):奇妙な癖のある犬

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会社勤めをしていた時、女子事務員が捨て犬を一匹連れてきた。

誰か飼って欲しいということだった。中型犬より少し小さめの割とこぎれいな犬だった。それを私が譲り受けた。何日かして会社の女子事務員たちが「あの、ワンちゃんの名前何と付けた?」と聞きたがった。「キコ」だよと教えたら、女子事務員たちの間に

一斉に歓声が上がった。「やっぱり、みんなで、三浦さんのことだからきっとキコと名前をつけるよ、と。予想してたのよ」とのことであった。おりしも時は、秋篠宮紀子様のことが連日マスコミを賑わしていた時代のことであった。それにしても、私も「底が割れていた」とは情けない。・・・・・・・

 

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こいつは現在の愛犬まるだ

三日飼えば恩を忘れぬ、という通り、すぐに私に馴れた。何しろ山村に住んでいるので犬の散歩道には困らない。昔のことで、放し飼いにしても何処からも苦情はこなかった。・・・・・・・・

山へ毎日散歩へ連れ出すのだが、幾日かして奇妙なことに気付いた。山道を私の十メートルほど前を歩くのだが、こいつは、ほとんど十メートル歩くごとに、後ろにいる私を振り返ってみるのである。最初はあまり気付かなかったが、そんな「奇妙な癖」を持っていた。おかしな犬だなとしか最初は思っていなかったが、そのうち気が付いた。こいつは元々捨てられた経験のある犬だ。元の飼い主に何処かへ連れていかれ、おいてけぼりを経験しているのだ。その経験から、けして飼い主から離れず、すこし歩くと振り返り、少し歩くと振り返り飼い主の存在を確認していたのだろう・・・・そういう思いにさせられた。

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それで、ちょっと意地悪な実験をしてみた。キコが前を歩いているとき、ちょっと杉の大木に身を隠してみた。ひょいと振り返ると、そこに私の姿がない。キコは一目散にもと来た道を駆け戻った。そこにもいない、また戻ってきた。そしてそこいらじゅう走り回って、私を捜した。そんな様子を見ながらやっぱり、キコは誰かにこうして捨てられた経験があるのだと、その経験が、奴にはトラウマのように焼き付いているのだろうと、私は確信した。杉の陰から、名前を呼ぶと走り寄って来て。私の前にうづくまり、小さなうなり声をあげた。・・・・

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