イミタチオ・クリスティ

村の小さな教会

10月20日(火):寓話 森と木こり

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ひとりの木こりが、斧の柄にしていた木を

折ったか、失くしたかした。

その損失はすぐにはつぐなえなかったので、

森はしばらくのあいだ難をまぬがれた。

男は鄭重に森にたのんだ。

新しい柄をつくるため

たった一本だけ木の枝を

そうっと切らせてもらいたい、と。

この商売道具をよそへ行って使います、

だれもが敬意を払っている、年を経た、美しい、

多くの樫の木や樅の木はそのままにしておきます、と言って、

なにも知らない森は、彼に新しい武器を提供した。

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森はそれを後悔することになった。木こりは斧に柄をすげる。

卑劣な奴はそれを使って、つぎつぎに、

かれに恵んでくれた森からはぎとる、

その主な飾りとなるものを。

森はたえず呻吟〔うめく〕する。

くれてやったものが自分を苦しめるとは!

 

これが世間と世間をみならう者のやりかた。

みんな恵まれたものを利用して恵んでくれた者をやっつけている。

わたしはそれについて語る気はなくなった。

しかし、いかに多くの快い木陰が。

それを嘆かない者があろうか。

あぁ、わたしがいくら叫んでも、うるさいやつと思われるばかり。

忘恩の悪弊は

いぜんとして世にはびこる。

・・・これは現実に美しい森が切り払われていくのを嘆いている・・・

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           ☆      ☆       ☆

東北地方には、南北に二本の山脈が走っている。中央にあるのが奥羽山脈で、千数百メートルから二千メートルくらいの山並みが連なる。一方、その山脈と日本海の間に連なる山脈が、「出羽丘陵」と言われている山々である。丘陵と言われるのは、ほとんどが千メートル以下の山々が連なっている標高の低い山が多いのでそう呼ばれている。そこが世界遺産に登録されている「白神山地」である。標高が高いと、ブナの木は育たないが、白神山地はまさに、ブナの木に覆われた深い森がある。そのブナの深い森に

「世の木こりたち」が目を付けた。これを切り倒して一儲けしようとたくらんだのである。国有林である、役所と結託して、ことは着々と進んでいた。ところが自然保護団体のグループが、これをかぎつけ反対運動を展開した。この運動家の中に誰か賢い人がいたらしい。いろいろ紆余曲折はあったようだが、このぶなの森を、「世界遺産」として申請し、認められた

世界遺産」に登録されてしまった。そうなると、何人も、ブナの木一本と言えども切り倒すことが出来なくなってしまったのである。市民運動などはたいてい失敗するものだが、彼らが勝鬨を挙げた稀有な例だろう。

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お陰で、わたしは毎日彼方に青々とした、山並みを見ることが出来ている。名古屋の枇杷島教会の牧師が来られた時、その自然遺産を見たいと言ったが、ただのブナの森があるだけだ、と言って案内しなかった。代わりに十和田湖の周辺のブナの森を案内した。この世界遺産はそう言う経緯があるので、「観光地」ではない。ただ樹齢何百年もの、ブナの木が山を覆っているだけである。そこには無数の生きものたちが、暮らしている。・・・

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今日は午前中、ちえこは草取り、わたしはカメムシ対策で窓をふさいだ。この春はカメムシの襲来で大変な目にあった。蟻のはい出る隙間もないほど、窓の目張りをしたが、あれはどこからでも入ってくる。稲刈りも終わったので、そろそろ、やって来そうな気配だ・・・極道は何処にでもいる。

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