貴方はもう忘れたかしら
赤い手拭マフラーにして
二人で行った横丁の風呂屋
一緒にでようねって言ったのに
いつも私が待たされた
洗い髪が芯まで冷えて
小さな石鹸カタカタ鳴った
貴方は私の体を抱いて
冷たいねと言ったのよ
若かったあの頃何も怖くはなかった
ただあなたのやさしさが怖かった
貴方はもう捨てたかしら
二十四色のクレパス買って
貴方の書いた私の似顔絵
巧く書いてね言ったのに
いつもちっとも似てないの
窓の下には神田川
三畳一間の小さな下宿
貴方は私の指先見つめ
悲しいかときいたのよ
若かったあの頃何も怖くなかった
ただ貴方のやさしさが怖かった
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作詞:喜多條正 作曲:南こうせつ
☆ ☆ ☆
1973年(昭和48年)に流行った。南こうせつとかぐや姫が歌った。たちまちヒット曲になった。青春時代とか、同棲時代とか流行したのも同じ頃でなかったかと記憶している。いい楽曲には違いなかったが、どこかなじめないものがあった。時代の波が代わろうとしていた。若者の意識も変わろうとしていた。戦後28年目、私もまだ29歳の頃であったから、こうした歌の範疇に入るはずだが、受け入れがたいものあった。・・・・
誰かがこうした流行り唄を、「ちまちまソング」と言っていた。「ちまちま」と言う言葉を辞書で調べると。「こじんまりまとまっている」と書いてある。なるほどと思った。今の若者はこじんまりまとまっているのだ。
それにとても器用なのである。少なくとも私などよりあらゆる面で、器用に生きようとしている、生きているように思えてならなかった。・・・
こじんまりまとまった世界が、今に生きる者には、しあわせなことになって来ていた。どうやら私は、ひねくれ者の部類に入るようで、『小さな石鹸カタカタ鳴った』と歌われても、「それがどうした」と一言いいたくなってしまうのである。・・・・・・・
『若かったあの頃何も怖くなかった ただ貴方のやさしさが怖かった』
この小さなしあわせも、やがてはかなく崩れてゆく予感に、ふるえている
女性がいる。・・・・・・・
昔、誰かの説教の中で聞いた話だが、しあわせすぎる女性がいた。彼女は
他人もうらやむほど幸福な日々であったのだが、そのことが逆に彼女を悩ませた。明日のことは誰にも分からない、今の幸せな境遇がいつまで続くのか、続けられるのか、彼女は悩み始めた。そして彼女はその幸せを失いたくないために、しあわせななままで、死を選んだ。幸せのままで死んでいった最も不幸な女性だった。・・・・・・
青春時代の歌詞にもこういうのがあった。
『二人はもはや美しい
季節を生きてしまったか
あなたは少女の時を過ぎ
愛に悲しむ人になる』
こんなところで聖書をひもとくのは、気が引けるがやはり、伝道者の言葉に耳を傾けなばならない。『空の空。全ては空』であると伝道者は語る。
それ故、私たちはイエスのお言葉に耳を傾けねばならない。八木重吉が書いている。「イエス・キリストが嘘を言うはずがない」と・・・・・