イミタチオ・クリスティ

村の小さな教会

7月4日(日):月命日

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沙羅双樹の花、やはり、一夜にして、花は落ちた。

犬のマルが死んでから、丁度ひと月になる、6月4日、16時に召された。

その日は、普通どおり、朝のウォーキングに出かけてきた。今思えばすこし元気がなかった。いつもなら、「さぁ、出かけるぞ」と声をかけると、飛び上がって喜ぶのだが、その日は、しぶしぶ、と言う感じだった。その時に、奴の体調に気づけばよかったのだが、それに、軽トラックにのるとき、荷台にあがりきれずに、あごをしたたか荷台のはしにうちつけた。笑ってしまったが、よく考えると、母親のポンも、死ぬ間際には、荷台に飛び乗れなくなっていた。散歩に出かける時、ちえ子と二人がかりで、尻を抱えあげなければならなかった。・・・・・・

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県立北欧の杜、今年の桜の木、今は小豆大の実が無数になっている。桑の実も食べごろ

朝の散歩は、県立北欧の杜へ出かける、車で15分くらいのところにある。そこを、小一時間ばかりかけて歩いてくる。杜の中央に「ドックラン」があって、半径20メートルくらいの、柵で囲まれた犬の遊び場があって、いつもそこでは、リードをはずして自由に遊ばせる。・・・・・

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キジが、ケーンケーンと鳴く、キジも鳴かずば撃たれまい

いつものように遊んで帰ってきたが、午後からは大雨になった。奴は小屋のベットの中で休んでいた。夕方気がつくと、奴は小屋から出て、私のいる部屋へこようとして、途中、わたり廊下をすべり落ち、雨の中でずぶぬれになっていた。急いで抱き上げて部屋の中へ連れ込んだが、もう虫の息だった。そして、16時ちょうどに息を引き取った。あっけない、あまりにもあっけない最後だった。・・・・・・

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庭の石灯籠

以来、このひと月は、自分は放心状態であった。全くの突然の死であった。今年の冬は特に、奴も老齢になったので、いつも私のかたわらにおいていた。部屋にも自由に出入りさせていた。・・・・・

深瀬牧師が、碧南市から連れてきた、ネコが死んだとき、肉親を失うより悲しいと言っていた。隣町の牧師も同じことを言っていた。16年育てた犬が死んだとき、同じころに父親を亡くしたが、犬の死んだことの方が悲しさが強かったと言った。荼毘に付し、その牧師夫妻と、私達は会食したが、悲しみは癒えることはないようであった。・・・・・

このひと月、私は何をしていたかと言うと、毎日、奴と一緒に歩いた山をひとりで駆け回っていた。あぁ、ここで鹿とであったなぁ、そら、あそこで、リスを追いかけて行ったなぁ、ほら、そこの泉でジャブ、ジャブ、体を洗っていたな。そんな思い出にひたりながら、車を走らせていた。・・

『死』という奴は怖ろしいものだ。死に逝くものには、「定め」であっても。残されるものには、その定めを受け入れるには、時間がかかる。ひょいと、何かのはずみで、奴のベットに目が向いてもそこは、もぬけのから。きれいに毛布をしいて、とこを整えても、奴はそこにいない。・・

失恋した時の一番の解決策は、新しい恋人を見つけることだ。このひと月あちこちのブリーダーに問い合わせてみたが、なかなか、気に入る奴が見つからない。「秋田犬」の血統書付きが、30万円だと言う。よさそうな犬だったが、30万円と言う数字に腹が立った。出せない額ではないが、犬を金で取引する気にはなれない。それよりも、マルに申し訳がたたないであろう。悲しさや寂しさは当分続きそうだが、奴への義理と供養のため、しばらく、犬を飼うのは控えておこうと思う。・・・・・

奴は絶対に「天国」いる。あの夜に奴は、私に姿を現した。あれは、単なる夢ではない、その感覚は誰に話してもわかってもらえるものではないが、私の中では確かなことになっている。・・・・・

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菅直人元首相が失脚したのち、四国遍路の巡礼をしていたという、菅笠(すげがさ)をかぶり、白装束の元首相に、行きかう人々は、おそらく、誰も気づかないであろう。あるテレビドラマで、原爆で子供を亡くした母親(田中裕子が演じた)が四国巡礼の旅に出る。悲しさの中でひたすら、歩き続ける、そこに悲しさの向こうに、何かしらの希望と安らぎを見いだそうとしているのだろう。旅と時間と、汗は、やがて快い安らぎを与えてくれるものだろうか。

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母親ポンの側に葬る