「ショパンが好き」と聖子は言った。私はジャズ以外の音楽にはあまり興味がなかった。幸いなことにショパンは本で読んで知っていた。
ジュルジュ・サンドとの恋物語も読んだ。
「ピアノの詩人」という聖子に、ふむ、ふむ、と私は分ったような、分からないような答え方をした。
今度レコード店で買ってみようなどと殊勝なことを考えた。
活字で理解した、ショパンと実際の音楽は違う。
ノクターンを買って来て、聴いてみた。
なるほどと思って聴いた。
確かにこれは「詩」だと新たな発見をした。
それは言葉や文字で表現できるものではないけれど、
その旋律は、人の感性に「詩情」を想起させるものがあった。