この絵は世界で一番有名な肖像画だ。書かれてから、随分時間が経っているので、今では、画面にひびが入ったり、色あせてしまっているけれど、もとは、まつげの一本一本まではっきりと分かるくらい、細かく描かれていたという。・・・・・・
この肖像を見た人は、必ず、ある誘惑にかられてきた。モナ・リザの謎めいた目と、口もとに浮かべた、かすかな微笑みの秘密を解き明かしたい、という誘惑だ。モナ・リザのふくみのある線、あたたかい色使い、上品な姿は、女性の神秘について、思いめぐらせた、レオナルド・ダビンチの答えかも知れない。画面全体が、この美しい女性のもつ、静かな美の世界で満たされている。背景に注目してみよう。曲がりくねった道、緩やかなカーブのある橋、高くくっきりした山などが、レオナルドの代表作の謎を一層深めている。(アーネスト・ラボフ作)より。訳:みつじまちこ