イミタチオ・クリスティ

村の小さな教会

4月10日(木):女の目方

女の目方の話をしよう。先日、フランス航空のスチュワーデスが「女の目方」で勝訴したばかりだ。「太りすぎたから辞めてほしい」という会社を負かしたのは、身長159センチ、体重57キロ、37歳の女性だった。「体操の女王」と言われたチェコのチャスラフスカさんを、古い新聞で調べてみたら「159センチ、58キロの美しい芸術品」と書いてあった。世界を魅惑した「芸術品」は、背丈は同じだが目方が多いのだから、かのスチュワーデスも太りすぎではあるまい。もっともこの話を披露すると、「目方のつく場所が違うのよ」と、厳しい批評をしたのは女性だった。やはり女性の敵は女性のようです。・・・・・

エジプトの女王、クレオパトラは目方が軽かった。彼女が絶世の美女であったかは異論があるようだが、とにかく自分の体をジュータンにくるませて、兵士に担がせ、シーザーの前に運ばせた。包みを開くと、21歳の女性がすっくと立ちあがり、乱れた髪にちょっと手をやり、シナを作った。英雄シーザーもこの出会いにすっかり参って、彼女との甘い生活にひたることになる。ジュータンで担ぎこまれるくらいだから、小さな、きゃしゃな女性であったという定説になっている。・・・・・

日本では明治41年に「ミス日本」のコンテストをやっている。美女の写真を掲載した時事新報は「「いやしくも容色を以て職業の資となすが如き品下れる者に非ず」。写真を見る者は「相応の礼意を以て臨むべし」とやかましい。写真でさえ、うやうやしく拝見しなければならないのだから、バスト、ヒップなどと失礼なことは言わなかった。一等当選は16歳の令嬢は、みずみずしく豊かであったと伝えられている。ニューヨーク・ブロードウェイの俳優は、出演契約のとき、「体重」を書き込むと聞いた。可憐な娘役が一年後に可憐に見えなくなるのは契約違反、というわけらしい・・・・・(深代惇郎天声人語