イミタチオ・クリスティ

村の小さな教会

7月22日(水):智恵子抄

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 ・・・千鳥と遊ぶ智恵子・・・  高村 光太郎

人っ子ひとり居ない九十九里の砂濱の

砂にすわって智恵子は遊ぶ。

無数の友だちが智恵子の名を呼ぶ。

ちい、ちい、ちい、ちい、ちいー

砂に小さな足あとつけて

千鳥が智恵子に寄って來る。

口の中でいつも何か言ってる智恵子が

両手をあげてよびかえす。

ちい、ちい、ちい、

両手の貝を千鳥がねだる。

智恵子はそれをばらばら投げる。

群れ立つ千鳥が智恵子をよぶ。

ちい、ちい、ちい、ちい、ちい、

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人間商売さらりとやめて、

もう天然の向こうへ行ってしまった智恵子の

うしろ姿がぽつんと見える。

二丁離れた防風林の夕日の中で

松の花粉をあびながら

わたしはいつまでも立ち盡す。

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昔、九十九里浜を通り秋田へ帰ったことがあった。随分広く長い砂濱だったような気がする。光太郎の愛妻智恵子、精神を病んでいた。