6歳の時
道端に落ちてたあんび餅
拾って食べた
悔いはない 悔いはない
15歳の時
お下げ髪が通り過ぎて
行った
悔いはない 悔いはない
20歳の時
油まみれで働いた
油虫と呼ばれたが
悔いはない 悔いはない
22歳の時4年遅れ
大学に入った
4年長生きすれば
元は取れる
悔いはない 悔いはない
26歳で官吏と教師にならず
野にありて生きると決めた
悔いはない 悔いはない
28歳で恋をした
時は流れて
今はもう女たちの名前さえ
覚えていない
悔いはない 悔いはない
友が去っていく
違う道があるのだろう
悔いはない 悔いはない
金融業に身を染めた
七人が首を括った
弱虫は死んでいく
悔いはない 悔いはない
父と母を看取った
母は喘息の発作が酷く
モル○ネを使った
悔いはない 悔いはない
50歳の時結婚した
割れ鍋にとじ蓋と言われても
悔いはない 悔いはない
65歳で神学校に入り
牧師になった
村の小さな教会
信徒はパラ、パラ
悔いはない 悔いはない
八十路になって
振り返ると後ろに
誰もいない 誰もいない
悔いはない 悔いはない
痛む脚と腰でコロニーを造った
小さな農園で野菜を作った
シンガーポールの友人たちが
やってくる 彼らに委ねても
悔いはない 悔いはない。