イミタチオ・クリスティ

村の小さな教会

6月24日(木):祈りの手

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今から500年ほど前、ドイツのニュールンベルグ町にデュラーとハンスという若者がいました。二人とも貧しい子だくさんの家に生まれ、小さい時から画家になりたいという夢をもっておりました。二人は版画を彫る親方のもとで見習いをしておりましたが、毎日が忙しくて絵の勉強ができません。思い切ってそこをやめて絵の勉強をしたい思いましたが、絵具やキャンバスを買うお金もままならないほど貧しく、働かずに勉強できるほどの余裕もありませんでした。・・・・

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ある時、ハンスがデュラーに一つのことを提案しました。「このままでは二人とも画家になる夢を捨てなければならない、でも僕にいい考えがある。二人で一緒に勉強できないので、一人づつ交代で勉強しよう。一人が働いて、もう一人のために働いてもう一人の人のためにお金を稼いで助けるんだ。そして一人が勉強が終ったら、今度は、別の一人が勉強できるから、もう一人は働いてそれを助けるんだ」。・・・・・

どちらが先に勉強するか二人は譲り合いましたが、「デュラー、君が先に勉強してほしい。君の方が僕より絵が上手いから、きっと早く勉強が済むと思う」・・・・・

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ハンスの言葉に感謝してデュラーは、イタリアのベネチュアへ絵の勉強に行きました。ハンスはお金が沢山稼げる鉄工所につとめることにしました。デュラーは「一日も早く勉強を終えてハンスと代わりたい」と思い、ハンスのことを考え寝る間も惜しんで絵の勉強をしました。一方、残ったハンスはデゥラーの為早朝から深夜まで思いハンマーを振り上げ、今にも倒れそうになるまで働きお金を送りました。一年、二年と年月は過ぎていきましたがデゥラーの勉強は終わりませんでした。勉強すればするほど深く勉強したくなるからです。ハンスは、「自分がよいと思うまでしっかり勉強するように」と手紙を書き、デューラーにお金を送り続けました。・

数年後ようやくデューラーはベネチュアで高い評判を受けるようになりました。それで故郷に帰ることにしました。

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「よし、今度はハンスの番だ」と急いでデューラーはニュールンベルグの町へ帰りました。二人は再会を手を取り合って喜びました。ところがデューラーはハンスの握りしめたまま呆然としました。そして泣きました。なんとハンスの両手は長い間の力仕事でごつごつになり、絵筆が持てない手に変わってしまっていたのです。

「僕のためにこんな手になってしまって」と言ってデューラーはただ頭を垂れるばかりでした。自分の成功が友達の犠牲の上に成り立っていた。彼の夢を奪い、僕の夢はかなった。その罪悪感におそわれる日々を過ごしていたデューラーは「僕にできることはないだろうか。少しでも彼に償いをしたい」そう思って、もう一度、ハンスの家を訪ねました。

ドァを小さくノックしましたが、応答がありません。でも確かに人がいる気配がします。デューラーはおそるおそるドァを開け、部屋へはいりました。するとそこでハンスが静かに祈りを捧げておりました。ハンスは歪んでしまった手を合わせ、一心に祈っていたのです。

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「神様、デューラーはわたしのことで傷つき、苦しんでいます。自分を責めています。どうかこれ以上彼が苦しむことのないように、そして、私が果たせなかった夢も、彼が叶えてくれますように。あなたの御守りと祝福が、いつもデューラーと共にありますように」。デューラーはその祈りを聞いて心打たれました。デューラーの成功を妬み恨んでいるに違いないと思っていたハンスが、妬み、恨むどころか自分のことより、デューラーのことを祈ってくれていたのです。ハンスの祈りを静かに聞いていたデューラーは、祈り終わった後に、彼に懇願しました。「お願いだ。君のその手を描かせてくれ」君のこの手で僕は生かされたんだ。君のこの祈りの生かされているんだ。

こうして、1508年友情と感謝のこもった「祈りの手」が生まれた。

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