イミタチオ・クリスティ

村の小さな教会

10月13日(水):一週間の余裕

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1974年の暮れも押し迫った12月26日、元日本陸軍一等兵中村輝夫が、インドネシアのモロタイ島で発見されたという大ニュースが伝えられた。インドネシア捜索隊の隊長スパディ中尉は、注意深く優秀な人物であった。彼は公式に発表される一週間前に彼を発見して、モロタイ島にある自宅に連れ帰った。彼は夫人と日本人の通訳を交えて、中村氏を刺激しないように、日本は30年前に敗戦したこと、誰も危害を加えるものはいないことを根気強く説得した。「あなたは自分の望む所へ行ける。日本でも、出身地の台湾でも、インドネシアにの頃ことも、いずれの道も選ぶことができる」と説明した。しかし中村は緊張を解かなかった。「どこへ行きたいか?」というスパディ中尉の問いに、中村は「もう一度ジャングルに帰りたい」と答えるのだった。・・・・・・・・

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そんな中村の緊張を解いたのは、一歳半になる中尉の一人娘であった。彼女は恐れもなく中村の膝にすがりつき、見上げてにこっと笑った。「やー、!!」それで中村は思わず声をあげて笑ってしまったのである。そこに文化の違いやことば、習慣風俗を超えた温かさが自然に生まれたのだった。それから一週間にわたり中村と共に自転車に乗ったり、インドネシアの歌を教えたりして過ごし、慎重に26日になって初めて中村のことを日本側に、その生存を伝えた。こうして一人の残留日本兵は無事帰国できたのである。

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