イミタチオ・クリスティ

村の小さな教会

4月12日(日):地霊

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探していた本がようやく見つかった。「地霊」。大仏次郎のノンフイクションの作品である。以前、読んでいたのだが、どういう訳か、最後の一行が気になって確かめてみたみたかった。

・・・獄中からN夫人に宛てて寄越した手紙の中に、次のような一行がある。「おれの不幸と比較になるのはドレフュスだけだ」。途方もなく一代を肉体だけの存在であった。・・・・・

ロシア革命前夜、テロリストと政府の二重スパイをしていた、アゼフという男の物語であるが、大仏次郎はこの男を、「地霊」として描いているのである。徹頭徹尾、「地に棲む霊」

として書いているのである。その男を【途方もなく一代を肉体だけの存在であった】と締めくくっている。仲間を裏切り、幾人ものテロリストを死においやりながら、なお自分の正当性を主張するアゼフを、良心をもたない、ただ、ただ、肉体だけの存在として描いているのである。・・・ロシア革命の前夜、帝政ロシアと戦う「テロリスト」たちは昨今のテロリストではない。純真な若者たちであった。・・・今日はイースター、主が甦られた記念の日である。パウロの宣教を、笑い飛ばし、あざ笑った人たちもまた「地霊」である。この世の生命が全てであると考えている人たちは、「地霊」に属する。神は人に永遠を思う心を与えられた。その心を失っている人たちのことである。

註:ドレフュス・(ユダヤ人)フランス軍の将校、ドイツのスパイとの嫌疑をかけられ、有罪とされるが、後に無罪が証明される。ユダヤ人であったが故の冤罪事件であった。

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