古代人が棲んでいたと思われる洞窟から、一本の骨が発見された。脚の部分で、その一部位だけが残されていた。考古学者がその一本の脚の骨を綿密に調べると、驚くようなことが分かってきた。・・・・それは成人のもので、損傷部が一か所あった。それも古傷で、骨が盛り上がっていて、その成人が幼い頃に負った傷跡であることが推測された。そして、これだけの骨に達する深い傷を負ったのであれば、その骨の持ち主は、立って歩けなかったであろうと思われた。いわゆる、障害者なのである。この人は、幼い頃に大けがをし、障害者のまま成人に達するまで生きていて、そしてやがて死んだのであろう。・・・
這うようにしか生きられなかった障害者を、労働の出来ない、獲物を狩ることの出来ない者を、人たちは養い、生かし,育み続けていたのである。洞窟に棲む原始人は、情愛の深い人たちだったのであろう。「役立たずは死ね」という社会ではなかったようである。そのことは、現代社会にも連綿として受け継がれていることは幸いである。しかし、ささやかではあるが・・・