比内地鶏を飼っている。今年は一羽しかいないが、以前、オンドリ一羽、雌鶏(めんどり)五羽飼っていた。10月の末頃になるとピンポン玉くらいの小さな卵を産み始める。毎朝それをいただきにいくのが楽しみである。ついでに、雌鶏たちを褒めることを忘れない。これ、本当の話だが、「これ誰が産んだの」と言うと、その子が、羽根をバタつかせながら、小さな卵の周りを踊るように回る。「あたし、あたし」と言っているのである。「ほぉ~、えらいねぇ~」と褒める。・・・・・
それからしばらくして、普通の大きさの卵を産むようになったが、ある時、二つ卵といって、市場に出回らないような大きな卵があった。「ほう、この大きいのは誰が産んだの?」と言うと。そばにいた大きなオンドリがすかさず出てきて、大卵の周りを廻り始めた。「僕だ、僕だ」・・・・こうして、オンドリはすぐにバレる嘘をつくが、ご主人に褒めて貰いたいのだろう。・・・
鶏の仕草を見ていて、身につまされるのは情けない話であるが、可笑しみをこらえながらも、本当のことだなと思ってしまう。誰でも、人に認められ、ほめられ、その存在価値を認められたいようである。・・・・・・
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この稿:2009年 イミタチオ・クリステイ 6月号掲載