イミタチオ・クリスティ

村の小さな教会

8月27日(金):一着のガウン

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ちえ子の姉、川村さちが召されて来春で5年になる。40年余岐阜で、牧師夫人として奉仕した。高校を出てすぐ神学校に進み献身者の道を選んだ。故郷は津軽五所川原の田舎、リンゴの農家の出である。ちえ子が幾度か小冊子イミタチオ・クリステイに姉のことを書いているので、詳しいことは諸略する。随分昔のことになるが、母親の反対を押し切って、献身者の道を歩んださちは、実家へお金の援助を頼んだことがなかったという。それでもちえ子の記憶によれば、一度だけお金を出して欲しいと母親にたのんできたことがあるという。理由は、夫である川村牧師のガウンを買うためだという。さちは洋裁が得意で子供たちの洋服は殆ど自分で作って着せていたが、さすがのさちも、ガウンだけは縫えなかったという。・・・

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昔は、今以上にガウンは高価なものであったらしい。開拓伝道していた川村家には、それだけの余裕はなかったことは当然である。戦後の福音的教会では、牧師の着用するガウンは一般的ではなかった。(教団にもよるが)必要不可欠なものではなかった。・・・・・

しかしながら、牧師夫人としては、夫にガウンを着てもらいたい、着せてあげたい、隣の教会の牧師さんが着ているなら、なおさらのこと、我が夫

にもと思ったとしても不思議ではない。これは、事の良し悪しの問題ではなく、切なる女心というべきものなのであろう。・・・・・

そんなわけで「さち先生」のうちに忸怩たる思いがあったかどうかまでは計りかねるが、《母親に、折り入って、お願いしにきた》のだそうである。もとよりその願いはすぐにかなえられた。古くは遠く昭和の時代のことである。・・・・・・・

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話は平成の時代の飛ぶ。

12月の初めの頃だったろうか、「お父さん、お父さん、絶対に怒らないでと言って・・・・」ちえ子が私の部屋に入って来た。今に始まったことではない。十字架の出来事のように、自分の失態をを赦してもらってから、事の次第を告白するのある。なかなか、狡猾なのだが、そうなると、エステルより小粒であるが意を決して進みでて来た「きさき」に私としてはシャクを差し出さざるを得ない。・・・・・

牧師を目指した時から、「私の前に立つな。でしゃばるな。足を引っ張るな。勝手に動き回るな」と。きつく言い聞かせてきたことであるが、さち、ちえ子。この姉妹はこの上なくよく似ている。時々はみ出して、大目玉をくらう。以前は、お友達にはがきを勝手に出していたが、ある時、それを読んでみたら。あわわわわ・・・というようなものであった。はがき一枚の文章の中に、誤字、脱字が数か所もあるのである。そんなわけで、今後は連名で手紙を書く時には、ほとんど「検閲」し。芋版を押さないものは投函してはならないと、厳命してある。ちえ子の名誉のために書いておくが最近は、辞書を引いてから書くようになったので、良くなった。

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さて、脇道にそれたが、この度はどんな失敗をしでかしたのか聞かないわけにはいかない。聞くところによると、どうやら、牧師の着るガウンを調べていたらしい(本当に似た姉妹だ)。いのちの言葉社に聞いたら、「東京銀座のナオミというお店を紹介されたらしい。そこでカタログを送ってもらおうとしたのだが、その時、牧師の身長、体重を聞かれたらしい。身長は私の身長、体重は何故か思い浮かばず自分の体重を言ったという。

間もなくカタログが送られてきたが、その中のメモ書きでこうあった。

「以前マネキンに着せて店頭に飾ってあったガウンが一着あります。袖口に少し色あせがありますが、よろしければ差し上げます」との鄭重な申し出であった。・・・・・・

さて、困ったことになってしまった。これから先は、ちえ子の判断だけでは決められない。あまつさえ、勝手にガウンの見積もりしていたことがバレると大目玉をくらう。しかし、ただで頂けるものなら、勿体ないし、言えば言ったで叱られる、そんなわけで。最初から「怒らないで・・・」

と。言って部屋へ入ってきたのであった。・・・・・・・・

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そして、ほとんどに2,3日、して、「一着のガウン」が鄭重な添え書きと共に贈られてきた。まことに行き届いた配慮で、どちらがいただき物を受けたかわからないくらいであった。・・・・・・

全くキツネにつままれたような、どうしてこうなるの、と思えるほど不思議な出来事であった。銀座ナオミのスタッフの皆さん、担当者のお名前はあえて控えさせていただきますが、心から感謝を申し上げたい。・・・

ガウンが届いてから二日後JTJの神学校から、連絡があって、「三浦さんの場合、レポート等すべて完了し、インターンもクリアしているので、代表的説教原稿一本出していただければ「卒業」です。ということであった。これもまた、キツネにつままれたような話である。思わず笑ってしまったが、つまるところ、主なる神は、私に時は短い、早く世に出て「働け」とお命じになっておられるのであろう。「わたしがクロス王を感動させたように、ナオミを感動させ、式服を授けた、順当な手続きを踏んで、一日も早く、式服を着れるような者になれ」・・・・・

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10年ほど前に、イミタチオ・クリステイという小冊子に載せた文章です。
いつもお読みいただき感謝します。